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乳糖不耐性下痢症
ある高齢の患者様から、
「私は小さい頃から牛乳を飲むと必ず下痢をしたのでずっと飲んでいなかったけど、焼酎を少し入れて飲むといいと友人から言われて、その通りにしたら大丈夫だったよ、はっはっは。」
という話をお聞ききしました。
牛乳で下痢をしてしまうのは、牛乳に含まれる乳糖を分解できない乳糖不耐性下痢症のためというのはよく知られていますが、それが酒を混ぜることで克服できた人がいたことは、科学的かはともかくとして驚きました。

乳糖は小腸から出るラクターゼという酵素で分解され吸収されます。
しかしラクターゼの分泌が少ない人が少なからずいて、乳糖がそのままの形で大腸に送られると乳糖の一部が腸内細菌によって分解され、その時できたある種の酸や炭酸ガスが大腸の壁を刺激したり、また乳糖が水分を腸壁から引き出してくるため下痢になってしまいます。

さて、人間は赤ちゃんのときこそ母乳を飲みますが、その後は離乳食に進み、ミルクは飲まなくなります。牛乳を飲んでいるのは牛がいるからで、家畜として牛や山羊がいなかった大昔は離乳後はミルクなんて飲んでいませんでした。
ラクターゼは母乳中の乳糖を分解するために用意されています。
動物界を見渡してみると、離乳後にミルクをのむ動物は自然界にはいません。
乳糖不耐性下痢症はここにカギがあります。

家畜が人間社会に入ってきてから離乳後もミルクを飲むことになりました。
離乳後もミルクを飲むようになったのは人類史上ほんの最近のことですから、離乳後にもミルクを飲むことは人間の体としては異常事態であり、実際、離乳後にはラクターゼの分泌活性は急激に低下します。
でも離乳後もラクターゼの分泌がある程度保たれ続ける人がいて、その人達が「牛乳を飲める人」というわけです。
だから牛乳が飲めないといっても別に不思議なことではなく、飲める人がラッキーだったとも言えます。
乳幼児期以来飲んでいなくても、また少しずつ飲み続けていくことでラクターゼの活性が戻ってくる場合もあります。

以前は乳糖不耐性下痢症の乳幼児のためにラクターゼが処方された時代もありましたが、現在は乳糖をあらかじめ分解してあるミルクが市販されていますので、ラクターゼは医療用医薬品からは消えてしまいました。

結局、酒と乳糖不耐性下痢症の関係はよくわかりませんでした。

愛グループ薬剤師 向井
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